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大阪地方裁判所 昭和35年(ワ)754号 判決 1972年9月14日

1 本訴原告・反訴被告・参加被告 海老原四郎(略称・海老原)

2 本訴原告・反訴被告・参加被告 中島美英子(略称・中島)

3 本訴原告 日興電気工業株式会社(略称・日興)

右代表者代表取締役 海老原四郎

4 本訴原告・参加被告 田中勝造(略称・田中)

以上四名訴訟代理人弁護士 江谷英男

5 本訴被告・反訴原告・参加被告 八尾市竜華農業協同組合(略称・農協)

右代表者理事 宮内久太郎

右訴訟代理人弁護士 正森成二

同 岩田嘉重郎

右訴訟復代理人弁護士 田川和幸

同 中嶋輝夫

6 本訴被告・参加被告 創光電飾株式会社(略称・創光)

右代表者代表取締役 伊藤秀美

7 本訴被告引受参加人・参加被告 株式会社 日新(略称・日新)

右代表者代表取締役 林貞雄

8 本訴被告引受参加人・参加原告 大阪精機工業株式会社(略称・精機)

右代表者代表取締役 加地政俊

右訴訟代理人弁護士 篠田桂司

右訴訟復代理人弁護士 岩永勝二

9 本訴被告・参加被告 ナイキ化工株式会社(略称・ナイキ)

右代表者代表取締役 河合朝雄

右訴訟代理人弁護士 仁藤一

同 菅生浩三

右訴訟復代理人弁護士 木下肇

主文

一  本訴原告(反訴被告・参加被告)海老原四郎に対し、

(一)  本訴被告(反訴原告・参加被告)八尾市竜華農業協同組合は、別紙(1)目録記載(一)の土地にかかる大阪法務局昭和三一年一一月二二日受付第二七、八三二号所有権移転請求権保全仮登記および同法務局同年月日受付第二七、八三〇号根抵当権設定登記の各抹消登記手続をせよ。

(二)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合は、本訴被告創光電飾株式会社に対して有する別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示Fニa'd'e'ヘD'トGBFの各点を順次直線で結んで囲んだ区域の引渡請求権を譲渡し、かつ、同本訴被告に対し、以後同区域の土地を本訴原告海老原四郎のために占有すべき旨を通知せよ。

(三)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合は、本訴被告ナイキ化工株式会社に対して有する別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示AロハFBAの各点を順次直線で結んで囲んだ区域の引渡請求権を譲渡し、かつ、同本訴被告に対し、以後同区域の土地を本訴原告海老原四郎のために占有すべき旨を通知せよ。

(四)  本訴被告(参加被告)『創光電飾株式会社』は、本訴被告引受参加人『株式会社日新』に対して有する別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示Fニa'b'c'd'e'ヘD'トGBFの各点を順次直線で結んで囲んだ区域の引渡請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後同区域の土地を本訴原告海老原四郎のために占有すべき旨を通知せよ。

(五)  本訴被告引受参加人(参加被告)株式会社日新は、本訴被告引受参加人大阪精機工業株式会社に対して有する右区域の土地の引渡請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後同地を本訴原告海老原四郎のために占有すべき旨を通知せよ。

(六)  本訴被告引受参加人(参加原告)大阪精機工業株式会社は、右区域の土地を明け渡せ。

(七)  本訴被告(参加被告)ナイキ化工株式会社は、別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示AロハFBAの各点を順次直線で結んで囲んだ区域から同地上の本造スレート葺平家建工場増築部分を収去して、右区域の土地を明け渡せ。

(八)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合は、金二八〇、八六二円を支払え。

(九)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および同創光電飾株式会社は、各自、金二四四、七一三円を支払え。

(十)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および本訴被告株式会社日新は、各自、金一三、二〇一、六三四円を支払え。

(十一)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および本訴被告引受参加人大阪精機工業株式会社は、各自、昭和四四年四月一五日から同本訴被告においては(二)項、同参加人においては(六)項の履行済みに至るまで月金一五二、七一二円の割合による金員を支払え。

(十二)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および同ナイキ化工株式会社は、各自、金二、六三九、九七四円、ならびに、昭和四一年一一月一日から本訴被告八尾市竜華農業協同組合においては(三)項、同ナイキ化工株式会社においては(七)項の履行済みに至るまで月金四五、六五二円の割合による金員を支払え。

二  本訴原告海老原四郎の本訴被告八尾市竜華農業協同組合、本訴被告引受参加人株式会社日新および本訴被告ナイキ化工株式会社に対するその余の請求を棄却する。

三  本訴原告(反訴被告・参加被告)中島美英子に対し、

(一)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合は、別紙(1)目録記載(二)の家屋にかかる大阪法務局昭和三一年一一月二二日受付第二七、八三一号所有権移転請求権保全仮登記および同法務局同年月日受付第二七、八三〇号根抵当権設定登記の各抹消登記手続をせよ。

(二)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合は、同創光電飾株式会社に対して有する別紙(1)目録記載(二)の家屋のうち別紙(2)図面表示⑤の棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同被告に対し、以後同棟を本訴原告中島美英子のために占有すべき旨を通知せよ。

(三)  本訴被告創光電飾株式会社は、本訴被告引受参加人株式会社日新に対して有する右棟の引受請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後同棟を本訴原告中島美英子のために占有すべき旨を通知せよ。

(四)  本訴被告引受参加人株式会社日新は、同大阪精機工業株式会社に対して有する右棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後同棟を本訴原告中島美英子のために占有すべき旨を通知せよ。

(五)  本訴被告引受参加人大阪精機工業株式会社は、右棟を明け渡せ。

(六)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合は、金一六六、一四七円を支払え。

(七)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および同創光電飾株式会社は、各自、金一九六、六七九円を支払え。

(八)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および本訴被告引受参加人株式会社日新は、各自、金三、三三一、七四四円を支払え。

(九)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および本訴被告引受参加人大阪精機工業株式会社は、各自、昭和四四年四月一五日から同本訴被告においては(二)項、同参加人においては(五)項の履行済みに至るまで月金二八、一一七円の割合による金員を支払え。

四  本訴原告中島美英子の本訴被告八尾市竜華農業協同組合および本訴被告引受参加人株式会社日新に対するその余の請求を棄却する。

五  本訴原告日興電気工業株式会社に対し、本訴被告八尾市竜華農業協同組合は、金三二四、五五二円、ならびに、これに対する昭和三二年一二月一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

六  本訴原告日興電気工業株式会社の本訴被告八尾市竜華農業協同組合に対するその余の請求を棄却する。

七  本訴原告(参加被告)田中勝造に対し、

(一)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合は、同創光電飾株式会社に対して有する別紙(1)目録記載(三)の土地のうち別紙(2)図面表示CGトD'DCの各点を順次直線で結んで囲んだ区域、ならびに、同目録記載(三)の家屋のうち同図面表示④⑧の各棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同本訴被告に対し、以後右区域の土地と右各棟を本訴原告田中勝造のために占有すべき旨を通知せよ。

(二)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合は、同ナイキ化工株式会社に対して有する別紙目録記載(三)の土地のうち別紙(2)図面表示イGCDEチイの各点を順次直線で結んで囲んだ区域、ならびに、同目録記載(三)の家屋のうち同図面表示①②③の各棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同被告に対し、以後右区域の土地と右各棟を本訴原告田中勝造のために占有すべき旨を通知せよ。

(三)  本訴被告創光電飾株式会社は、本訴被告引受参加人株式会社日新に対して有する別紙(1)目録記載(三)の家屋のうち別紙(2)図面表示④⑧の各棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後右各棟を本訴原告田中勝造のために占有すべき旨を通知せよ。

(四)  本訴被告引受参加人株式会社日新は、同大阪精機工業株式会社に対して有する右④⑧の各棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後右各棟を本訴原告田中勝造のために占有すべき旨を通知せよ。

(五)  本訴被告引受参加人大阪精機工業株式会社は、別紙(1)目録記載(三)の土地のうち別紙(2)図面表示CGトDCの各点を順次直線で結んで囲んだ区域、ならびに、同目録記載(三)の家屋のうち同図面表示④⑧の各棟を明け渡せ。

(六)  本訴被告ナイキ化工株式会社は、別紙(1)目録記載(三)の家屋のうち別紙(2)図面表示①②③の各棟を明け渡せ。

(七)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合は、金一、三一六、九九七円、ならびに、昭和四一年一一月一日から(一)(二)項の履行済みに至るまで月金六〇、四四四円の割合による金員を支払え。

(八)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および同創光電飾株式会社は、各自、金八六、六四〇円を支払え。

(九)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および本訴被告引受参加人株式会社日新は、各自、金一、四一六、一四六円を支払え。

(十)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および本訴被告引受参加人大阪精機工業株式会社は、各自、昭和四四年四月一五日から、同本訴被告においては(一)項のうち家屋関係部分、同参加人においては(五)項のうち家屋関係部分の履行済みに至るまで、月金一一、五五五円の割合による金員を支払え。

(十一)  本訴被告八尾市竜華農業協同組合および同ナイキ化工株式会社は、各自、金二、五八九、七五二円、ならびに、昭和四一年一一月一日から、本訴被告八尾市竜華農業協同組合においては(二)項のうち家屋関係部分、同ナイキ化工株式会社においては(六)項の履行済みに至るまで月金二八、五六一円の割合による金員を支払え。

八  本訴原告田中勝造の本訴被告八尾市竜華農業協同組合および同創光電飾株式会社に対するその余の請求を棄却する。

九  反訴原告(本訴被告・参加被告)八尾市竜華農業協同組合の請求を棄却する。

一〇  参加原告(本訴被告引受参加人)大阪精機工業株式会社の請求を棄却する。

一一  訴訟費用は、

(一)  本訴原告・反訴被告・参加被告海老原四郎に生じた費用を一六分し、その八を本訴被告・反訴原告・参加被告八尾市竜華農業協同組合に、その一を本訴被告・参加被告創光電飾株式会社に、その二を本訴被告引受参加人・参加被告株式会社日新に、その三を本訴被告引受参加人・参加原告大阪精機工業株式会社に、その二を本訴被告・参加被告ナイキ化工株式会社に負担させ、

(二)  本訴原告・反訴被告・参加被告中島美英子に生じた費用を一二分し、その六を本訴被告・反訴原告・参加被告八尾市竜華農業協同組合に、その一を本訴被告・参加被告創光電飾株式会社に、その二を本訴被告引受参加人・参加被告株式会社日新に、その三を本訴被告引受参加人・参加原告大阪精機工業株式会社に負担させ、

(三)  本訴原告日興電気工業株式会社に生じた費用を一〇分し、その一を同本訴原告に、その九を本訴被告・反訴原告・参加被告八尾市竜華農業協同組合に負担させ、

(四)  本訴原告・参加被告田中勝造に生じた費用を一六分し、その八を本訴被告・反訴原告・参加被告八尾市竜華農業協同組合に、その一を本訴被告・参加被告創光電飾株式会社に、その二を本訴被告引受参加人・参加被告株式会社日新に、その三を本訴被告引受参加人・参加原告大阪精機工業株式会社に、その二を本訴被告・参加被告ナイキ化工株式会社に負担させ、

(五)  本訴被告・反訴原告・参加被告八尾市竜華農業協同組合、本訴被告・参加被告創光電飾株式会社、本訴被告引受参加人・参加被告株式会社日新、本訴被告引受参加人・参加原告大阪精機工業株式会社および本訴被告・参加被告ナイキ化工株式会社に生じた各費用を各自に負担させる。

事実

第一全当事者間に争いのない事実 ≪省略≫

第二本訴関係

≪省略≫

二 そこで、原告らは、左記のとおりの判決、ならびに、そのうちの登記関係以外の部分につき仮執行の宣言を求める旨申し立てた。

(一)  原告海老原に対し、

(1)  被告農協は、別紙(1)目録記載(一)の土地にかかる大阪法務局昭和三一年一一月二二日受付第二七、八三二号所有権移転請求権保全仮登記および同法務局同年月日受付第二七、八三〇号根抵当権設定登記の各抹消登記手続をせよ。

(2)  被告農協は、同創光に対して有する別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示Fニa'd'e'ヘD'トGBFの各点を順次直線で結んで囲んだ区域の引渡請求権を譲渡し、かつ、同被告に対し、以後同区域の土地を原告海老原のために占有すべき旨を通知せよ。

(3)  被告農協は、同ナイキに対して有する別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示AロハFBAの各点を順次直線で結んで囲んだ区域の引渡請求権を譲渡し、かつ、同被告に対し、以後同区域の土地を原告海老原のために占有すべき旨を通知せよ。

(4)  被告創光は、被告引受参加人日新に対して有する別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示Fニa'b'c'd'e'ヘD'トGBFの各点を順次直線で結んで囲んだ区域の引渡請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後同区域の土地を原告海老原のために占有すべき旨を通知せよ。

(5)  被告引受参加人日新は、同精機に対して有する右区域の土地の引渡請求権を譲渡し、かつ、同精機に対し、以後同地を原告のために占有すべき旨を通知せよ。

(6)  被告引受参加人精機は、右区域の土地を明け渡せ。

(7)  被告ナイキは、別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示AロハFBAの各点を順次直線で結んで囲んだ区域から同地上の木造スレート葺平家建工場増築部分を収去して、右区域の土地を明け渡せ。

(8)  被告農協は、金二八〇、八六二円を支払え。

(9)  被告農協および同創光は、各自、金二四四、七一三円を支払え。

(10)  被告農協および被告引受参加人日新は、各自、金一三、二〇一、六七〇円を支払え。

(11)  被告農協および被告引受参加人精機は、各自、昭和四四年四月一五日から被告農協においては(2)項、被告引受参加人精機においては(6)項の履行済みに至るまで月金一五二、七一二円の割合による金員を支払え。

(12)  被告農協および同ナイキは、各自、金二、六三九、九八六円、ならびに、昭和四一年一一月一日から被告農協においては(3)項、同ナイキにおいては(7)項の履行済みに至るまで月金四五、六五二円の割合による金員を支払え。

(二)  原告中島に対し、

(1)  被告農協は、別紙(1)目録記載(二)の家屋にかかる大阪法務局昭和三一年一一月二二日受付第二七、八三一号所有権移転請求権保全仮登記および同法務局同年月日受付第二七、八三〇号根抵当権設定登記の各抹消登記手続をせよ。

(2)  被告農協は、同創光に対して有する別紙(1)目録記載(二)の家屋のうち別紙(2)図面表示⑤の棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同被告に対し、以後同棟を原告中島のために占有すべき旨を通知せよ。

(3)  被告創光は、被告引受参加人日新に対して有する右棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後同棟を原告中島のために占有すべき旨を通知せよ。

(4)  被告引受参加人日新は、同精機に対して有する右棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後同棟を原告中島のために占有すべき旨を通知せよ。

(5)  被告引受参加人精機は、右棟を明け渡せ。

(6)  被告農協は、金一六六、一四七円を支払え。

(7)  被告農協および同創光は、各自、金一九六、六七九円を支払え。

(8)  被告農協および被告引受参加人日新は、各自、金三、三三一、八七六円を支払え。

(9)  被告農協および被告引受参加人精機は、各自、昭和四四年四月一五日から被告農協においては(2)項、被告引受参加人精機においては(5)項の履行済みに至るまで月金二八、一一七円の割合による金員を支払え。

(三)  原告日興に対し、被告農協は、金三六九、四三三円、ならびに、これに対する昭和三三年一二月一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

(四)  原告田中に対し、

(1)  被告農協は、同創光に対して有する別紙(1)目録記載(三)の土地のうち別紙(2)図面表示CGトD'DCの各点を順次直線で結んで囲んだ区域、ならびに、同目録記載(三)の家屋のうち同図面表示④⑧の各棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同被告に対し、以後右区域の土地と右各棟を原告田中のために占有すべき旨を通知せよ。

(2)  被告農協は、同ナイキに対して有する別紙(1)目録記載(三)の土地のうち別紙(2)図面表示イGCDEチイの各点を順次直線で結んで囲んだ区域、ならびに、同目録記載(三)の家屋のうち同図面表示①②③の各棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同被告に対し、以後右区域の土地と右各棟を原告田中のために占有すべき旨を通知せよ。

(3)  被告創光は、被告引受参加人日新に対して有する別紙(1)目録記載(三)の家屋のうち別紙(2)図面表示④③の各棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後右各棟を原告田中のために占有すべき旨を通知せよ。

(4)  被告引受参加人日新は、同精機に対して有する右④⑧の各棟の引渡請求権を譲渡し、かつ、同参加人に対し、以後右各棟を原告田中のために占有すべき旨を通知せよ。

(5)  被告引受参加人精機は、別紙(1)目録記載(三)の土地のうち別紙(2)図面表示CGトDCの各点を順次直線で結んで囲んだ区域、ならびに、同目録記載(三)の家屋のうち同図面表示④⑧の各棟を明け渡せ。

(6)  被告ナイキは、別紙(1)目録記載(三)の家屋のうち別紙(2)図面表示①②③の各棟を明け渡せ。

(7)  被告農協は、金一、三一六、九九七円、ならびに、昭和四一年一一月一日から(1)(2)項の履行済みに至るまで月金六〇、四四四円の割合による金員を支払え。

(8)  被告農協および同創光は、各自、金一一三、四九二円を支払え。

(9)  被告農協および被告引受参加人日新は、各自、金一、四一六、一四六円を支払え。

(10)  被告農協および被告引受参加人精機は、各自、昭和四四年四月一五日から、同被告においては(1)項のうち家屋関係部分、同参加人においては(5)項のうち家屋関係部分の履行済みに至るまで、月金一一、五五五円の割合による金員を支払え。

(11)  被告農協およびナイキは、各自、金二、五八九、七五二円、ならびに、昭和四一年一一月一日から、被告農協においては(2)項のうち家屋関係部分、被告ナイキにおいては(6)項の履行済みに至るまで、月金二八、五六一円の割合による金員を支払え。」

三 被告らおよび被告引受参加人らは、いずれも、

「原告らの本訴請求を棄却する。」

との判決を求めた。

≪省略≫

第三反訴関係

≪省略≫

二 そこで、原告は、左記のとおりの判決を求める旨申し立てた。

(一)  被告海老原は、原告に対し、別紙(1)目録記載(一)の土地につき、大阪法務局昭和三一年一一月二二日受付第二七、八三二号所有権移転請求権保全仮登記に基づき、昭和三三年三月九日の代物弁済を原因とする所有権移転の本登記手続をせよ。

(二)  被告中島は、原告に対し、別紙(1)目録記載(二)の家屋につき、大阪法務局昭和三一年一一月二二日受付第二七、八三一号所有権移転請求権保全仮登記に基づき、昭和三三年三月九日の代物弁済を原因とする所有権移転の本登記手続をせよ。

三 被告らは、いずれも、

「原告の請求を棄却する。」

との判決を求め(た。)

第四当事者参加訴訟関係

≪省略≫

二 そこで、参加原告は、左記のとおりの判決を求める旨申し立てた。

(一)  参加原告と参加被告海老原、同中島、同田中、同農協、同創光、同日新および同ナイキとの間において、別紙(1)目録記載(一)(二)(三)の各不動産がいずれも参加原告の所有であることを確認する。

(二)  参加原告に対し、

(1)  参加被告海老原は、別紙(1)目録記載(一)の土地につき、

(2)  参加被告中島は、同目録記載(二)の家屋につき、

(3)  参加被告田中は、同目録記載(三)の土地および家屋につき、いずれも昭和三一年一〇月一九日の売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

(三)  参加被告日新および同ナイキは、参加原告に対し、別紙(1)目録記載(三)の(1)ないし(3)の家屋を明け渡せ。

三 参加被告らは、

「参加原告の請求を棄却する」

との判決を求め(た。)

第五証拠≪省略≫

理由

第一本訴関係

原告・海老原、中島、日興、田中

被告・農協、創光、日新(引受参加人)、精機(同)、ナイキ

一  別紙(1)目録記載(一)の土地が、かねて原告海老原の所有であり、同目録記載(二)の家屋が、かねて原告中島の所有であること、また、同目録記載(三)の土地が、もと原告海老原の所有であったこと、該土地および同(三)の家屋がいずれも昭和三三年一一月一〇日、原告田中に売り渡され、右売買を原因として、同年同月二五日、同原告のため所有権移転登記がなされたことは、当事者間に争いがない。

二  しかるところ、被告農協、同創光、被告引受参加人日新および被告ナイキは、被告農協において別紙(1)目録記載(一)(二)(三)の各不動産の所有権を代物弁済により取得したと主張しているので、以下右主張の当否について判断する。

(一)  被告農協のため、

(1) 別紙(1)目録記載(一)の土地については大阪法務局昭和三一年一一月二二日受付第二七、八三二号をもって、同(二)の家屋については同法務局同年月日受付第二七、八三一号をもって、いずれも同年同月一九日代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全仮登記が、

(2) 右土地および家屋の双方について、同法務局昭和三一年一一月二二日受付第二七、八三〇号をもって、同年同月一九日設定契約(債務者・被告引受参加人精機)を原因とする根抵当権設定登記

がなされていることは、当事者間に争いがない。

(二)  次に、前記のような登記がなされるに至った経緯としては、≪証拠省略≫によれば、次の事実が認められる。すなわち、原告海老原は、その所有にかかる別紙(1)目録記載(一)の土地、ならびに、その義母にあたる原告中島の所有にかかる目録記載(二)の家屋によって他から融資を得ようと図り、昭和三一年五月一一日、被告引受参加人精機に対し、これらの不動産を、賃料月額金四〇、〇〇〇円、敷金二、五〇〇、〇〇〇円の約束で賃貸したが、なお別個の多額の融資を右精機に求め、その代わりに、精機が他から融資を受けるについては、これらの不動産を担保に供することに承諾を与えた。右により、精機は、具体的には被告農協から継続的に金銭の貸付を受けることとし、昭和三一年一一月一九日、精機の代表取締役加地政俊において原告海老原に対し、右の債務の返済を担保するため、これらの不動産に極度額金一〇、〇〇〇、〇〇〇円の根抵当権を設定するとともに、これにつき代物弁済予約を締結し、かつ、以上に基づく抵当権設定登記および所有権移転請求権仮登記の申請手続をなすことを求めたところ、同原告は、これを諒とし、即日その配下の訴外米山某に委任状、印鑑、印鑑証明書等の所要の物件を交付し、同原告および原告中島の名において適宜の手続をなすことを命じた。そこで、即日、同訴外人は、右加地および被告農協専務理事野口庄司と同道し、司法書士事務所で所要の契約書や登記申請書を作成してもらい、登記申請に及んだものである。なお、別紙(1)目録記載(二)の家屋が原告中島の所有であり、同海老原の所有でなかったことは、前述のとおりであるが、同原告が従前からこの家屋を事実上管理することを認められていたことは、たしかであり、これを担保に供することについても、原告中島から明示または黙示の承諾を得ていたものと思われ、かりに右が授権の範囲をこえていたとしても、上記の経緯で、被告農協としては、右が授権の範囲内と信じていた。≪証拠判断省略≫

以上認定事実によれば、原告海老原が自己の意思に基づきその所有にかかる別紙(1)目録記載(一)の土地につき被告農協との間で代物弁済予約を締結したものであることは、もちろんである。そして、原告中島の所有にかかる同目録記載(二)の家屋についても、同原告の代理人たる原告海老原において被告農協との間で代物弁済予約を締結したが、右代理権が認められないとしても、同被告においては右代理権の存在を信ずるにつき正当の理由を有していたもので、原告中島は、民法第一一〇条により、右代物弁済予約につき本人としての責を免れぬものというべきである。

(三)  被告農協、同創光、被告引受参加人日新および被告ナイキは、右代物弁済予約の目的物件中には別紙(1)目録記載(三)の不動産も含まれていたと主張しているが、右主張事実の確証は、存しない。

(四)  ところで、別紙(1)目録記載(一)(二)の各不動産にかかる前示の代物弁済予約および根抵当権設定契約が、被告農協の被告引受参加人精機に対する貸付金債権を担保するために締結されたものであることは、前述のとおりであるところ、被告農協が、農業協同組合法に基き設立された農業協同組合であるが、被告引受参加人精機がその組合員でないという原告らの主張事実は、被告農協との間では争いがなく、その他の被告らおよび被告引受参加人らにおいて明らかに争わないから、これを自白したものとみなすべきである。そうすると、この貸付は、同法第一〇条、ことにその第一項第一号で認められた農業協同組合のなし得る事業の範囲に属しないものであるから、無効といわなければならない(最高裁昭和四一・四・二六判決・民集二〇巻四号八四九頁)。

そこで、被告農協、同創光、被告引受参加人日新および被告ナイキは、右貸付が無効であるならば、被告農協が、貸付金と同額の不当利得返還請求権を有していたことになると主張するのであるが、かりにそのとおりであるとしても、前示の代物弁済予約や抵当権設定契約が、かかる不当利得返還請求権をも担保する趣旨で締結されたものであると認むべき根拠は、これを見出すことができない。

(五)  してみれば、被告農協から原告海老原および同中島に対し、右貸付金債権の弁済に代え、別紙(1)目録記載(一)(二)の各不動産を取得する旨の代物弁済予約完結の意思を表示したという同被告、被告創光、被告引受参加人日新および被告ナイキの主張事実は、原告らの認めるところであるが、前述のとおり右貸付がいわゆる員外貸付として無効である以上、上記の予約完結によって右各不動産につき所有権移転の効果が発生したものと認めることは、困難であり、本件の事案において、原告らが右所有権移転の効果を争うことが、格別信義則に反するものとも思われない。

(六)  また、被告農協、同創光、被告引受参加人日新および被告ナイキは、原告らが、被告農協の貸付が無効であることを知りながら、これにつき代物弁済予約をした以上、その予約の完結により同被告の取得したものに対しては、民法第七〇五条によりその返還を請求し得ぬはずであると主張するが、右予約の完結が被告農協からの一方的意思表示をもってなされたものであることは、前述のとおりであるのみならず、原告らが、その当時、被告農協の貸付が無効であり、従って、原告らが、同被告に対し、代物弁済として右各物件を提供する債務の存在しないことを知っていたことを認めるに足りる証拠はないから、右被告農協らの主張は、理由がないものである。

さらに、被告創光、被告引受参加人日新および被告ナイキは、被告農協が代物弁済により上記各不動産の所有権を取得したものと信じ、これから賃借して占有を始めたものであるから、こうした状態を招いた原告らとしては、民法第九四条の趣旨に従い、代物弁済の無効をもって右占有者らに対抗し得ぬものであるとも主張するが、同条の法理を不当に拡張する独自の見解であって、もとより理由のないものである。

(七)  以上要するに、被告農協による別紙(1)目録記載(一)(二)(三)の各不動産の所有権取得は、これを認めるに由がないものである。

三  さらに、被告引受参加人精機は、別紙(1)目録記載(一)(二)(三)の各不動産の所有権を売買により取得したと主張しているが、これに対する判断は、次のとおりである。

同引受参加人が、昭和三一年五月一一日、原告海老原からその所有にかかる別紙(1)目録記載(一)の土地および原告中島の所有にかかる同目録記載(二)の家屋を、賃料月額金四〇、〇〇〇円、敷金二、五〇〇、〇〇〇円の約定で賃借したことは、前認定のとおりである。そして、≪証拠省略≫によれば、右賃貸借契約締結の際、同引受参加人の希望に従い、原告海老原が将来これらの不動産を売却するときには、他に優先して同引受参加人に売り渡すものとし、その際の売買代金を六、五〇〇、〇〇〇円と定める旨の合意の成立を見たことが認められる。

しかしながら、原告海老原、被告引受参加人精機間の合意が上記の段階を出ない限り、それは、未だ売買の予約ともいうを得ないものであるが、右賃貸借契約の締結の時およびその後において、前示各不動産につきさらに進んで現実に売買契約が成立した事実は、その確証がない。≪証拠判断省略≫

別紙(1)目録記載(三)の不動産については、原告ら、被告引受参加人精機間において、売買はもちろん、賃貸借その他なんらの契約関係の成立の事実も、証拠上これを認めることが困難である。

被告引受参加人精機の上記主張も、理由がないものである。

四  被告農協および被告引受参加人精機は、別紙(1)目録記載(三)の土地にかかる原告海老原、同田中間、同目録記載(三)の家屋にかかる原告日興、原告田中間の各昭和三三年一一月一〇日売買契約が、通謀虚偽表示であるとして、その無効を主張しているが、右主張事実についても、その立証がない。

五  以上の次第であるから、別紙(1)目録記載(一)の土地が、かねて原告海老原の所有であり、現在もそうであること、同目録記載(二)の家屋が、かねて原告中島の所有であり、現在もそうであること、同目録記載(三)の不動産については、土地が、もと原告海老原の所有であり、家屋が、もと原告日興の所有であったが、いずれも昭和三三年一一月一〇日売買により原告田中の所有に帰し、同年同月二五日、同原告のための所有権移転登記がなされ、右所有権取得をもって第三者に対抗し得るに至ったことは、被告らおよび被告引受参加人らにおいてこれを争い得ぬものといわなければならない。

そこで、右を前提とし、原告らの個々の請求につき順次判断を進めると、次のとおりである。

六  登記請求について。

原告海老原の所有にかかる別紙(1)目録記載(一)の土地、ならびに、原告中島の所有にかかる同目録記載(二)の家屋につき、被告農協を権利者としてなされた前記の所有権移転請求権保全仮登記および根抵当権設定登記は、その基本となる債権の存在が認められない以上、残存が許されぬものである。よって、同被告は、これらの不動産の所有者たる各原告に対し、その関係の不動産につき右各登記の抹消登記手続をなす義務を負うものといわなければならない。

七  不動産の明渡請求について。

(一)  本件係争不動産の占有関係について、

(1) 被告農協が、昭和三三年三月八日以降別紙(1)目録記載(一)(二)(三)の各不動産(ただし、別紙(2)図面表示⑬の家屋とその敷地であるe'd'c'b'a'ホe'の各点を順次直線で結び囲んだ区域を除く。)を占有するようになったこと、

(2) 被告農協から同創光に対し、昭和三三年九月一七日以降

イ 別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示のFBGトD'ヘe'd'c'b'a'ニFの各点を結び囲んだ区域

ロ 同目録記載(二)の家屋(ただし、同図面表示⑬の棟を除く。)

ハ 同目録記載(三)の土地のうち同目録表示CGトD'DCの各点を順次直線で結び囲んだ区域

ニ 同目録記載(三)の家屋のうち同図面表示④⑧⑨の各棟を賃貸し、それ以来被告創光が直接、占有するようになったこと、

(3) 次いで、昭和三四年五月一一日、被告創光から被告引受参加人日新に右(2)のイないしニの不動産の占有が移転されたこと、

(4) さらに、昭和四四年四月一五日、被告引受参加人日新から同精機に右各不動産の占有が移転され、その後程なく同図面表示⑥⑦⑩⑪⑫⑨の棟が滅失したこと、

(5) 被告農協から同ナイキに対し、昭和三四年一月一日

イ 別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示イAロハFBGイの各点を順次直線で結び囲んだ区域

ロ 同目録記載(三)の土地のうち同図面表示イGCDEチイの各点を順次直線で結び囲んだ区域

ハ 同目録記載(三)の家屋のうち同図面表示①②③の各棟を賃貸し、被告ナイキは、右賃借地のうち同図面表示ABFハロAの各点を順次直線で結び囲んだ区域上に木造スレート葺平家建工場を増築したことは、いずれも当事者間に争いがない。

(二)  被告農協は、昭和三二年六月一九日まで上記各不動産を直接または間接に占有していたことを認めながら、同年月日、被告引受参加人日新および被告ナイキとの間の賃貸借の解約を告知したから、これにより被告農協による間接占有が終了したと主張する。しかし、間接占有(代理占有)の成立に必要ないわゆる占有代理関係は、占有代理人が本人に対し目的物を返還すべき関係が、占有代理人による目的物所持取得の原因たる事実から外形的に認められる限り、存在するものであるから、賃貸借の終了のごときは間接占有の存続を妨げる事由にはならぬものと解しなければならない。被告農協の右主張は、理由がないものである。

以上と同様に、被告創光の占有終了の主張も採用するに由がない。

(三)  してみれば、被告らおよび被告引受参加人らによる本件係争各不動産の直接ないし間接占有の事実は、すべて原告らの主張どおりに認められるものであり、こうした占有が所有者たる原告らに対抗し得る権原に基づくものであることの主張、立証は、前示のほかはなんら存しない。それ故、各被告および各被告引受参加人は、原告らの請求の範囲内で、各自の占有不動産をその所有者たる原告らに明け渡し(ただし、間接占有者については、指図による明渡し)、なお、被告ナイキにおいては、上記増築建物をその占有土地から収去する義務を負うものといわなければならない。

八  損害金の請求について。

次に、被告らおよび被告引受参加人らは、上記のとおり原告らの所有不動産を不法に占有し、または原告の使用を妨げていることにより、その期間賃料相当額の損害金をその所有者たる原告らに支払う義務を免れぬものである。そして、≪証拠省略≫によれば、別紙(3)(4)(5)(6)(7)の適正賃料の記載を別紙(10)のとおりに訂正するほか、別紙(3)ないし(9)記載のとおり各物件の適正賃料額を認定することができる。

そこで、右に従い、各原告の請求し得る損害金の額を算出すると、次のとおりである。

(一)  原告海老原

(1) 被告農協が、別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示イGトD'ヘe'd'c'b'a'ニFハロAイの各点を順次直線で結んで囲んだ区域を昭和三三年三月八日以降単独または共同に占有していることにより、同被告に請求し得る損害金額は、昭和四一年一〇月三一日までの分として金一一、八五九、九五〇円(別紙(3)(10))、同年一一月一日以降の分として月額金一九八、三六四円(別紙(3))である。ただし、これから後記(2)ないし(5)の共同占有等による損害金額を控除した昭和三三年三月八日から同年九月一六日まで(後記(2)ないし(4)の部分)と同三三年三月八日から同年一二月三一日まで(後記(5)の部分)の単独占有に基づく損害金は、金二八〇、八六二円と算出され、請求金額と一致する。

(2) 昭和三三年九月一七日から昭和三四年四月三〇日までの間、別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示のFニa'b'c'd'e'ヘDトGBFの各点を順次直線で結んで囲んだ区域を、被告創光が直接に、同農協が間接に占有していたことにより、右被告らに請求し得る損害金は、請求金額とひとしく金二四四、七一三円である(別紙(4))。

(3) 昭和三四年五月一日から昭和四四年四月一四日までの間、右区域の土地を、被告引受参加人日新が直接に、被告農協が間接に占有していたことにより、この両者に請求し得る損害金は、請求金額を少し下廻り、金一三、二〇一、六三四円である(別紙(4)(10))。

(4) 昭和四四年四月一五日以降、右区域の土地を、被告引受参加人精機が直接に、被告農協が間接に占有していることにより、この両者に請求し得る損害金は、請求金額とひとしく明渡済みに至るまで月額金一五二、七一二円である(別紙(4))。

(5) 昭和三四年一月一日以降、別紙(1)目録記載(一)の土地のうち別紙(2)図面表示イAロハFBGイの各点を順次直線で結んで囲んだ区域を、被告ナイキが直接に、被告農協が間接に占有していることにより、この両者に請求し得る損害金は、請求金額を少し下廻り、昭和四一年一〇月三一日までの分として金二、六三九、九七四円、同年一一月一日以降の分として明渡済みに至るまで月額金四五、六五二円である(別紙(5)(10))。

(二)  原告中島

(1) 被告農協が、昭和三三年三月八日から同年九月一六日までの間、別紙(1)目録記載(二)の家屋のうち別紙図面表示⑤⑥⑦⑩の各棟を占有していたことにより、同被告に請求し得る損害金は、請求金額とひとしく金一六六、一四七円である(別紙(6))。

(2) 昭和三三年九月一七日から昭和三四年四月三〇日までの間、右各棟を、被告創光が直接に、被告農協が間接に占有していたことにより、右両者に請求し得る損害金は、請求金額とひとしく金一九六、六七九円である(別紙(6))。

(3) 昭和三四年五月一日から昭和四四年四月一四日までの間、右各棟を、被告引受参加人日新が直接に、被告農協が間接に占有していたことにより、右両者に請求し得る損害金は、請求金額を少し下廻り金三、三三一、七四四円である(別紙(5)(10))。

(4) 被告引受参加人精機が、昭和四四年四月一五日、右各棟の占有を開始して程なく、別紙(2)図面表示⑥⑦⑩の各棟を取り毀したという原告中島の主張事実は、同引受参加人および被告農協において明らかに争わないから、これを自白したものとみなすべきである。もっとも、同被告も右取り毀しに共同加功したという事実は、同被告において否認しているにもかかわらず、その立証がない。しかし、右取り毀しによる同原告の損害は、同被告が同原告に対する明渡義務を履行せず、目的物件を無権原で占有していたことが原因で生じたものであるから、その賠償義務を免れ得ぬものと解すべきである。そこで、同年月日以降、右⑤の棟を、被告引受参加人精機が直接に、被告農協が間接に占有し、右⑥⑦⑩の各棟を同引受参加人が取り毀したことにより、右両者に請求し得る損害金は、請求金額とひとしく明渡済みに至るまで月額金二八、一一七円である(別紙(6))。

(三)  原告日興

同原告は、昭和三三年一一月一〇日まで、別紙(1)目録記載(三)の家屋の所有者であったから、その間これを占有していた被告農協に対し、右による損害金として、請求金額を少し下廻り金三二四、五五二円、ならびに、これに対する弁済期の後たる同年一二月一日以降の民法所定の年五分の率による遅延損害金を請求し得るものである(別紙(8)(9))。

(四)  原告田中

(1) 同原告が別紙(1)目録記載(三)の土地および家屋の所有権を取得し、これにつき対抗要件を具えた昭和三三年一一月二五日以降、右各不動産を被告農協が占有し、かつ、後記のとおりその一部が損壊されたことにより、同被告に請求し得る損害金額は、昭和四一年一〇月三一日までの分として金五、〇六一、四四七円、同年一一月一日以降の分として明渡済みに至るまで月額金六〇、四四四円である(別紙(7)(8)(9)(10))。ただし、これから後記(2)ないし(5)の共同占有等による損害金額を控除した損害金は、同年一〇月三一日までの分として金一、三一六、九九七円、同年一一月一日以降の分として明渡済みに至るまで月額金六〇、四四四円と算出され、請求金額と一致する。

(2) 同原告が別紙(1)目録記載(三)の家屋の所有権を取得した昭和三三年一一月一〇日から昭和三四年四月三〇日まで、別紙(1)目録記載(三)の家屋のうち別紙(2)図面表示④⑧⑨の各棟を、被告創光が直接に、被告農協が間接に占有していたことにより、この両者に請求し得る損害金は、金八六、六四〇円である(別紙(8))。しかし、同原告が、右不動産に対する所有権を取得した日の前日である昭和三三年一一月九日までの賃料額相当の損害金を請求しているのは、失当というべきである。

(3) 昭和三四年五月一日から昭和四四年四月一四日まで、右各棟を、被告引受参加人日新が直接に、被告農協が間接に占有していたことにより、この両者に請求し得る損害金は、請求金額どおり金一、四一六、一四六円である(別紙(8))。

(4) 被告引受参加人精機が、昭和四四年四月一五日、右各棟の占有を開始して程なく、別紙(2)図面表示⑨の棟を取り毀したという原告田中の主張事実は、同引受参加人および被告農協において明らかに争わないから、これを自白したものとみなすべきである。もっとも、同被告も右取り毀しに共同加功したという事実は、同被告において否認しているにもかかわらず、その立証がない。しかし、右取り毀しによる同原告の損害は、同被告が同原告に対する明渡義務を履行せず、同物件を無権原で占有していたことが原因で生じたものであるから、その賠償義務を免れ得ぬものと解すべきである。そこで、同年月日以降、右④⑧の棟を、被告引受参加人が直接に、被告農協が間接に占有し、右⑨の棟を同引受参加人が取り毀したことにより、右両者に請求し得る損害金は、請求金額とひとしく明渡済みに至るまで月額金一一、五五五円である(別紙(8))。

(5) 昭和三四年一月一日以降、別紙(1)目録記載(三)の家屋のうち別紙(2)図面表示の①②③の各棟を、被告ナイキが直接に、被告農協が間接に占有していることにより、右両者に請求し得る損害金は、請求金額とひとしく、昭和四一年一〇月三一日までの分として金二、五八九、七五二円、同年一一月一日以降の分として明渡済みに至るまで月額金二八、五六一円である(別紙(9))。

第二反訴関係

原告・農協

被告・海老原、中島

原告の反訴請求は、別紙(1)目録記載(一)の土地につき被告海老原から、同目録記載(二)の家屋につき被告中島から、いずれも昭和三三年三月九日代物弁済により所有権を取得したことを前提とするものである。しかし、右前提たる所有権取得の事実は、前判示のとおりこれを認めることができないから、その請求は、理由がないものというべきである。

第三当事者参加訴訟関係

参加原告・精機

参加被告・海老原、中島、田中、農協、創光、日新、ナイキ

参加原告の請求は、別紙(1)目録記載(一)の土地につき参加被告海老原から、同目録記載(二)の家屋につき参加被告中島から、同目録記載(三)の土地および家屋につき被告から、いずれも売買により所有権を取得したことを前提とするものである。しかし、右前提たる所有権取得の事実は、前判示のとおりこれを認めることができないから、その請求は、理由がないものというべきである。

第四むすび

以上の理由により、

一  本訴原告らの請求は、損害金請求の一部を失当として棄却するが、残余の部分を正当として認容し、

二  反訴原告の請求を失当として棄却し、

三  参加原告の請求を失当として棄却し、

四  訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条第一項但書を適用し、

五  本訴原告らの仮執行の宣言の申立を不相当と認めて却下することとし

て、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 戸根住夫 裁判官 岡田春夫 長野益三)

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